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石を主体にハンコを彫っていた私ですが、消しゴムハンコはやらないの?と聞かれることがあります。

…ずっ~と前は作っていました。
でも今とは違って、トンボのMONO消しゴムを普通のカッターと彫刻刀で彫っていました…。

ありがたいことに石のハンコの作り方を教える機会をいただき、それと同時に、消しゴムハンコでのご依頼もいただいていましたが、そんな事情でお断りしていました。チャレンジを試みるものの、まだまだ至らず…。

なので、この機会にもう一度頑張って作ってみよう!と、
専用消しゴムとデザインカッター・彫刻刀を準備して、とにかく、たくさん、作ってみました!そしてようやくコツを掴んできたので、その制作レポートをまとめました。
僭越ながら少し気付いたこと、アドバイス等書かせていただきましたので、消しゴムハンコを始めてはみたものの、どうもうまく出来ない方の、ちょっとした参考になれば幸いです。


<制作レポート>
まず消しゴム購入。

ハンコ用の消しゴムといってもたくさんあるのですね。100円ショップで手に入るものから、少々お値段のするものまで、固さ・厚みが違うもの8種類用意しました。それと、ずっと前にトーカイで買った消しゴムの使い残しも含めて全9種類試しました。(本当はまだまだいっぱいあります。)

道具は、オルファ(お馴染みの大手刃物メーカー)とセリア(100円ショップ)のデザインカッター・消しゴムハンコ用の小型ナイフ(道刃物工業製)・彫刻刀の切り出し(別名・印刀)・三角刀の大中小・丸刀の大と小を用意。
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(家にあったのものに加え、いくつか買い足しました)

似たような道具でも、大きさ・重さ・刃の厚み・片刃か両刃か、などの違いがあるので、それぞれ彫りながら試していきました。


まず「消しゴム」に関して。
個人的には、道具や材料はちゃんとしたものを使うべきだと思っているのですが、100円ショップ(ダイソーとセリア)の物も試しました。
柔らかいのはブヨブヨして彫りづらく、かと言って硬いのは彫るには良いのですが、切り離すのが大変。石を彫っていたせいもあるのでしょうか、私には100円ショップのものはダメでした。

その点「ほるナビ」は彫りやすかったです。最後にも紹介していますが、私には「かため」がちょうどよかったです。



道具」に関して。
彫刻刀派、デザインカッター派がいるとすれば、私は彫刻刀派。でした。 
デザインカッターで消しゴムを彫ったことがなかったので、まずは彫り方を研究することに…。
 
調べてみると、どうやら手前に引いて切る人が多い?ようですが、彫刻刀に慣れていた私には、向こう側に押すようにして切る方が安心感があります。


彫るスタイル」も2種類あって、木彫りのように版をテーブルに置いて彫るスタイルと、手に持って彫る、というより切るスタイル。

置いて彫ると安定。手に持つとより自由が利く感じ。ちょっとした彫り直しの際には、手に持った方がやり易いのですが、慣れないと難しいかと思います。



<様々試して思った 私からの、いちアドバイス>

慣れないうちは消しゴムをテーブルの上に置いて彫る方が安定してやり易い。
構えの基本は、刃が向こう側に進むように持つ

あとは、作品の大きさやデザインによって、消しゴムを手に持つ方がやり易かったり、手前に引くようにして切った方が、やり易い場合がありますので、慣れてきたら徐々にいろんなスタイルを試すといいと思います。


とにかくまず大事なのは手を切らないようにすること!

当然ですが、刃の進む方向に指があると危険ですから、
消しゴムを手に持って切る場合には、
刃物を持つ手は固定したまま、消しゴムを動かして切るというのが基本になります。
置いて彫る場合も、手を置く位置に注意してください。
こちらも慣れてきたら、刃物を回す方が効率的な場合があるので、試してみるといいです。



<道具の特徴と使い方のコツ>

三角刀』は初心者にはとても便利です。
一度彫るだけでV字に彫れるので、あとは力の強弱(彫りの深さ)で線に変化を付けます。
ごく浅く彫ると細い線が引けますが、浅く彫るのが苦手な方には鋭角の三角刀があるので、そちらがあると便利です。
ただ、こちらの鋭角の小さな三角刀は、逆にしっかりと彫らないと、線が細すぎてインクで潰れてしまいます。練習用の消しゴムで彫り具合を確かめてください。

ちなみに私が持っている大中小。大と中は角度は同じ90度で幅が違うだけ(5㎜と3㎜)です。小は見たところ50度くらい、幅は2㎜です。



デザインカッター』の場合は、横から見たときに断面が三角刀で彫った溝と同じになるようなイメージで彫ります。
刃の角度を45度にして、両側2回切ることで溝がV字になるように彫るのが基本です。

カッターの刃はとても薄くて鋭いので、思っているより深く切れていたり、軽い力で切れるので、図案からずれて切りすぎてしまうことがあります。逆に、「すみっこ」まで刃が届いていなくて切り取ることが出来ないことも多いです。

刃先がどのあたりまで達しているのかを想像しながら、あわてず、ゆっくり着実に彫り進めるのがコツです。特に「すみっこ」は刃先を意識して切り残しがないようにすることが大切です。



丸刀』は、余分なところを落とす時に使えます。細かいところは『小さい丸刀』があれば便利です。「三角刀」ですることも出来ます。




<石と消しゴムと両方やってみて気付いたこと>
まずは、ゴムの良いところ。
 
弾力があるので、木や曲面にも上手に押せます。
それから、大きな面を取り除くことが簡単なので、空白の多いデザインや、サイズ自体が大きい作品が作りやすいです。 
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(こちらは名刺サイズです。)

大変なところ。
「良いところ」で、『大きな面を取り除くことが簡単…』と書いたばかりですが、中くらいの大きさの面や、入りくんだ部分を取り除くのは結構難しいです…。

慣れてくるとデザインカッターでV字を連続させることで取り除いていけます。
小文字のv、または小文字のwを作るような感じといってもいいかもしれません。

大抵のゴムは2層になっています。残しておくべき線の周りに下の層が1ミリ(弱)くらい見える状態になれば、次の作業が楽になります。

練習のアイデアですが、初めは三角刀でシンプルなデザインを作ることから始めて、その三角刀で出来る溝を参考に、デザインカッターで再現させるように練習すると、段々切り込む角度と適切な深さが分かるようになります。それが分かるようになると、デザインカッターを使った方が、より自由に細かいデザインも彫れるようになります。

細く切り込むところは、浅く彫るのもポイントです。
 


ゴム版は一発勝負。繊細なデザインを作るのは集中力が必要です。 
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(鳥のくちばしが思うような形にならずに苦労しました。やりすぎると切り落としてしまいそうで…。)
 
一か所の失敗だけで全部作り直したくない場合は、ハンコを押した後に、付け加えて修正する手もあるようです。練り消しゴムを適当な大きさに丸めて、簡易ハンコとして使えばいいとか。ペンで書き足しちゃうとか!

(石の場合、程度が浅ければ紙やすりで修正可能です。少しずつ形を調整するのも簡単なのが石の良いところ!) 


そして、柔らかい消しゴム版での注意。
インクを落とす時、強くこすって印面を欠けさせてしまうこともあります。
これは大抵彫り方の問題です。
どんな素材でも言えることですが、横から見て(線を中心に)台形に彫るのがベストです。

水性インクなら、水で濡らしたティッシュで優しく拭き取ると、消しゴムに余計な負担をかけずに済みます。油性インクには専用クリーナーがあります。



「保管」に関して。
学生時代の経験では(だいぶ昔になりますが!)、消しゴムはプラスチックと接触していると溶けてしまいましたし、紙に包んでいても長く放置していた消しゴムハンコがとろけてしまったことがありました。
「ほるナビ」はポリプロピレン(PP)製のケースなら大丈夫だそうです。専用ケースも販売されています。

まだこの専用消しゴムを長く使っていないので、重ねて保管するとどうなるのか、(たぶん良くない)、使い続けての耐久性はどのくらいなのか、保管していての経年劣化等々分かりませんが、大事にしたいものは、使ったら綺麗に拭いて重ならないよう並べて保管すると長持ちするのではないでしょうか。
 



最後に…ご参考までに。
今、自分にとって彫りやすいゴムはシードの『かため「ほるナビ」黒ベース生地』。
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この「かため」はサクサクとした彫り心地で、彫るときだけでなく、切り離すときも気持ちがいいです。黒ベースは汚れが目立たないのも良いところ。


道具は、私が所有している中では道刃物さんの消しゴムハンコ用の小型ナイフが軽くて取り回しが良かったです。(上記の道具の写真、左から3番目)

オルファのデザインカッター(正式名称はデザイナーズナイフ、またはアートナイフ)は、色んな種類があり、私のは軸が重くて消しゴムハンコには不向きでした。ペンタイプナイフの方が軽そうで使いやすくみえます。刃の品質は間違いないと思います。替え刃が付いているので経済的です。
一方、セリアのデザインカッターの刃はよく見ると先まで尖っていませんでした。でも軸は使えますし、軽くて取り回しがいいので、オルファの刃に交換して使うことにします! 

とにかくたくさん彫って慣れるしかないのですが、慌てず、ひとつひとつの作業を確実にこなすことが近道だと思います。

私ももう少し頑張ってみるつもりです。みなさんも楽しんで作ってみてください!

以上、長々とお付き合いくださり、ありがとうございました。

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(練習のために彫ったハンコ達の一部。その他失敗多数あり…。)